あまり大きな話題が無い今年の阪神駅弁大会にあって、唯一絶対的な目玉になっているのが、昨年から登場している宮島口うえのの「あなごめし」。
前回は、土日だとオープンと同時にダッシュで会場まで上がり、15分程度で全ての整理券が終わるぐらいに競争率が高かったのですが、今回は平日とは言え昼前まで整理券が残っていたりして、前回よりは提供数を確保出来ているみたいです。
うえののあなごめしのクォリティについて私が今更語るのも何ですが、個人的に一番凄いと思うのは、この弁当が冷めても美味しい、いやむしろ冷めたほうが美味しい点にあると思っています。
無論、温めても美味しいのは事実です。今回も、1/4ほどは小皿に取り分け、日本酒を軽く振ってからラップし、電子レンジで温めて食べてみましたが、脂が乗った焼きあなごが敷かれたホカホカのご飯は、素直に「美味しい」と口に出る旨さです。でもあくまで、この場合は穴子が主役なんですよね。
ところが冷えたままで食べてみると、何と穴子とご飯の主従が逆転するんですよ! 温めた時には分からなかった、ご飯に染み込んだ穴子出汁の深み、経木の香りがふわっと立ち上り、それを穴子のしっとりした脂がスッと寄り添うという、両者が一体となった別世界が現れてくるんですよね。
ご飯が主役だからと言って、ご飯だけを食べてもダメなんですよ。あくまで穴子とセットでないと意味が無いのです。鯖寿司なんかもそういう点はありますが、やはりあなごめしの一体感は別次元であり、その妖力はもはや人間業ではなく悪魔の仕業ではないかと疑うぐらいです。
折尾のかしわめしもそうですが、冷めても美味しい弁当には必ずと言っていいぐらい、経木や竹の皮といった自然素材が容器に使われています。コストや効率重視のコンビニがとっくに捨ててしまった宝が、少なくなったとは言えまだ駅弁には残されている。それが、駅弁大会に通ってしまう理由でもあるのです。
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